活動記事:イベント報告
2022年度JITMAPセミナーi
「環境技術における日印協力の推進」
イベント名 | インドにおける日本の環境技術の導入に向けたセミナー 「環境技術における日印協力の推進」 |
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開催日 | 2023年2月14日 |
開催方法 | インドマハラシュトラ州プネ市所在のマハラシュトラ商工農会議所(MCCIA)会議室にて対面開催 |
概要 | マハラシュトラ商工農会議所(MCCIA)及び公益社団法人日本環境技術協会(JETA)からの支援を得て開催。主にマハラシュトラ州の政府機関や企業関係者等計65名が参加。JITMAPを通じたこれまでの日本の環境技術の普及促進活動の概要や成果等を紹介するとともに、インド・日本・その他の国における取組経験や日本の環境技術を紹介し、今後、同州における大気汚染等の環境問題を克服するうえで、日印両国の環境協力の果たす役割や、JITMAPを通じた環境協力等について意見交換等を行った。 |
関連資料 |
日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)特集 |
イベントの様子ii
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背景
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、2016年に、日本の低炭素技術のインドの産業界への移転促進を目的とした枠組である「日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)」を、日本国環境省の支援を得て、インドのエネルギー資源研究所(TERI)と共同で立ち上げました。立上げ以降、様々な産業部門への汎用性の高い日本の低炭素・省エネ技術のインドの製造業への普及促進に努め、近年は、対象技術を環境技術にも拡大し活動してきました。 JITMAPでは、今後も日印政府・民間企業等と協力して、日本の環境技術を有する企業とその技術を必要とするインドの企業をマッチングし、技術の普及促進をサポートすることで、インドのネット・ゼロ達成及び持続可能な社会構築への貢献、それに向けた日印環境協力の促進に取り組んでいきます。
セミナー報告
本セミナーは、主に環境改善活動の事例と日本の環境技術の紹介及びラウンドテーブルディスカッションで構成されました。
環境改善活動の事例と日本の環境技術の紹介
最初にJETAの海外委員会委員長である小林剛士氏より、日印の環境協力を強化するうえで参考になる事例として、日本と中国の大気汚染管理・対策に関する協力事例が紹介されました。具体的には、日本の事例として、1960~70年代の大気汚染の経験について説明し、政府による環境規制や、さらに厳しいとされる、企業による排出規制の自主管理等の対策を通じて課題が改善されたことを紹介しました。また中国の事例では、2000年代後半からの経済発展に伴う大気環境の悪化に対して、政府主導による工場からの排出濃度に対する環境税等の対策や各省独自の環境対策の推進等により、環境が改善したことを紹介しました。
そしてJETAが長年関っている日中環境技術協力について、日本の環境規制の状況や計測方法等に関するセミナー及び相互の現地訪問等を通じて、中国での環境規制強化への協力を中央政府や地方政府と行ってきた経験を紹介しました。これらの事例を踏まえて、日印の環境技術分野における協力強化のメリット(例:PM2.5の削減等)について説明し、インドの現在の課題や障壁を理解し、日本がどのような支援を提供できるか共に考えたいことを強調しました。
続いて、HORIBAインドの 環境・プロセスセグメント次長であるKunal Soni氏より燃焼煙道ガスモニタリング技術やプロセスガス分析器、大気質・水質モニタリング装置等の環境技術に関する事例紹介がありました。同氏は、正確なモニタリングは、是正措置を取るために重要であり、大気中の様々な金属がどのように測定されるか等についても紹介しました。
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ラウンドテーブルディスカッション |
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熱心に聞き入る参加者 |
ラウンドテーブルディスカッション
続くラウンドテーブルディスカッションでは、現地政府機関、企業、ビジネス機関等から計10名のパネリストを招き、「マハラシュトラ州が直面する環境問題を解決するために、インド、日本、JITMAPはどのような支援や協力を行うべきか」をテーマに意見交換を行いました。
プネ市にあるマハラシュトラ州汚染管理局(MPCB)のサブ・リージョナルオフィサー であるNitin Shinde氏は、MPCBが中央汚染管理局(CPCB)によって制定された法律を州内で施行するための機関であり、継続的な大気質モニタリングを同州6都市を対象に行っていることや、産業界から排出される水と排煙も監視対象であると説明しました。そして同氏は、環境は複合的な責任を伴うため協力的な取組が必要であり、MPCBは大気質モニタリング分野等について日本からの協力を歓迎すると述べました。
Emcure Pharmaceuticals社のオペレーションディレクターであるBal Krishan Saini氏は、JITMAPの技術適用可能性調査(FS)による提言を実行した結果、圧縮空気システムに使用する電力で約600万ルピー相当の削減を達成したことを紹介しました。
また、マハラシュトラ商工農会議所(MCCIA)のサステイナビリティ部門長であるChetankumar Sangole氏は、JITMAPの下で日本人専門家と一緒に取り組んだ経験を紹介し、JITMAPの活動であるFSが、インドの産業に莫大な省エネ効果をもたらしていることを実感したことを共有しました。そして、日本人専門家からの個々の提案は省エネ効果が小さくても、積み重ねると大きな効果になることや、こうした技術交流によりインド企業の技術力が向上していることも指摘しました。
今回のセミナーを通じて、同州政府機関・民間企業関係者とも日印の環境協力に関する率直な意見交換を行うことができたので、今後JITMAPではそれらの意見を参考にしつつ同州の環境改善のための案件形成に取り組んでいく予定です。
ⅰ JITMAPはIGESとTERIが事務局として、日印両国の政府関係機関・ビジネス団体等の協力関係機関等と連携し、インドにおいて日本企業の環境技術の普及を促進するための活動を実施しています。具体的には、日本企業の協力を得て、インド企業の経営幹部やエネルギー管理者、エネルギー診断⼠向けの⽇本の環境技術に関する理解を深めてもらうセミナーやワークショップ、技術の適⽤可能性及びその適用効果等を把握するための現地企業における技術適用可能性調査(FS)、さらに、技術の伝搬者となる可能性の高いエネルギー診断⼠やエネルギー管理者等を対象としたより実践的な技術研修を実施しています。
ⅱ JPRSIでは環境インフラの海外展開に役立つ情報をお届けするセミナーを随時開催しています。会員登録(企業・団体登録/個人登録)をしていただくと、セミナーの予定がタイムリーに届きます。会員登録をされていない方は、ぜひご登録ください。
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