活動記事:イベント報告

2023年度JITMAPiセミナー
– 日本の低炭素技術とそのベストプラクティス –

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イベント名 日本の環境技術の導入促進に関する研修セミナー
「日本の低炭素技術とそのベストプラクティス 」
開催日 2024年1月23日
開催方法 インド タミル・ナドゥ州チェンナイ市にて対面及び現地デモンストレーション
概要 インドのエネルギー診断士や企業のエネルギー管理者・幹部等に向けて、日本の環境技術の導入促進に関する研修セミナーを開催。圧縮空気・蒸気管理システムを対象に、日本の低炭素技術(LCTs)とその運用に関する知識と能力の向上を通して、日本の環境技術の普及促進を図ることを目的とした。印全国生産性評議会(NPC)とタミル・ナドゥ州エネルギー開発公社(TEDA)の協力を得て、エネルギー資源研究所(TERI)と連携して開催した。
関連資料

Final Agenda_Training Program_Chennai_23Jan24-9.1.pdf

日本の低炭素技術とそのベストプラクティス:圧縮空気システムと蒸気管理 | IGES

日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)特集 | IGES

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イベントの様子ii

背景

公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、2016年に、日本の低炭素技術のインドの産業界への移転促進を目的とした枠組である「日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)」を日本国環境省の支援を得て、インドのエネルギー資源研究所(TERI)と共同で立ち上げました。立上げ以降、様々な産業部門への汎用性の高い日本の低炭素・省エネ技術のインドの製造業への普及促進に努め、近年は、対象技術を環境技術にも拡大して活動してきました。
JITMAPでは、今後も日印政府・民間企業等と協力して、日本の環境技術を有する企業とその技術を必要とするインドの企業をマッチングし、技術の普及促進をサポートすることで、インドのネット・ゼロ達成及び持続可能な社会構築への貢献、それに向けた日印環境協力の促進に取り組んでいきます。

セミナー報告

 初の試みとして、開会セッション・講義と実機のデモンストレーションとを組み合わせた二部構成として、より効果的に技術の理解向上を図りました。これは、NPCの全面的な協力により、NEDOの支援で設置されたデモンストレーションサイトの使用が実現したものです。
 開会セッションでは、TERIと在印日本国大使館からの挨拶、JITMAPを通じたこれまでの日本の環境技術の普及促進活動の概要と成果の紹介を行いました。続く第一部では、それぞれの専門家がインドの産業部門におけるさらなる脱炭素化やエネルギー効率化に焦点をあてて、日本企業からの圧縮空気システム専門家と蒸気管理システム専門家による技術の説明とその導入による効果の紹介を行いました。講義では対象技術の特徴や性能(低炭素性やエネルギー効率性)に関する優位性に加えて、技術導入検討時にライフサイクルコストの視点を持つ重要性、技術の導入により期待されるコベネフィット効果等、技術導入によるメリットやシステムの最適な運用に関する説明も行いました。発表資料は、セミナー対象参加者を考慮し、技術の特徴や導入メリット、さらにエネルギー効率化やGHG排出削減につながる技術・機器の適切な運用方法等、主に技術的な要素で構成し、対象技術の専門家によって作成されました。
 第二部は会場をNPCに移し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援で同所に設置されている日本の技術機器を実際に稼働させてデモンストレーションしながら、専門家が第一部の講義で説明した内容の振返りと定着、加えて、機器を稼働させながら説明した方が理解し易い内容に関して説明しました。

研修目的・対象者・技術

 印産業部門において脱炭素化やエネルギー効率化に関わるエネルギー診断士や企業のエネルギー管理者・幹部等を対象とし、日本の低炭素技術とその効率的な運用手法の実践に関する知識と能力の向上の機会の提供を通じて、日本の技術とインドの企業を結び付け、技術の普及促進を図ると共に、インドの脱炭素化やエネルギー効率化の推進に寄与することを目的としました。また、将来、日本の低炭素技術とその効率的な運用手法の両面の知識を持ち、その技術を中立的な立場で伝搬できる人材の育成を通じて、印企業が日本の技術を知る機会を増やし、技術の普及が促進されることも目指しています。
 本イベントでは、日本環境省とインド国環境森林気候変動省との間で開催された日印政策対話(2021年9月)で確認された両国間の環境協力の優先協力分野の中から気候変動を取り上げ、印産業部門において、汎用性が高く分野横断的な低炭素技術である圧縮空気システムと蒸気管理システムを対象技術としました。

地元関係機関との連携

 本イベントの開催に当たり、現地の州政府機関であるタミル・ナドゥ州エネルギー開発公社(TEDA)、及び全国生産性評議会(NPC)の協力を得ました。現地の環境やエネルギー分野に精通し、同分野の関係者とも広いネットワークを有するそれらの機関との連携により、政府関係機関やエネルギー診断士、インド企業の幹部等の適切な対象者へのアクセスが可能になる等、効果的に開催することができました

成果

 対象とした両方の技術に対して、参加者は高い関心を示し、座学と実機を見せながらの説明を組み合わせたことにより、参加者もより積極的に参加し、質疑応答も活発に行われる等、専門家と参加者との双方向のコミュニケーションがより緊密になり、参加者の日本の技術に関する理解向上が進みました。
 ネットワーキングランチでは、講師・参加者・関係者間で名刺交換や交流が促進されました。
 参加者からも概ね高く評価され、参加者の大半はこうした技術を通じた脱炭素化やエネルギー効率化への取組に関心が高く、今後も同様なイベントが多数開催されることへの期待があることが分かりました。
 参加者だけでなく、現地協力機関のTEDAとNPCからも、JITMAPのように二国間の環境協力に基づき、現地の状況に応じた活動を実施していることが高く評価され、今後の協力継続の意向が示される等、更なる連携が期待できるネットワークが形成できました。

参加者の声

 参加者からはイベント全般に関して、主に、“印市場のコスト重視・費用対効果重要視の姿勢”、“他の技術での同様な研修セミナー開催の希望”、“実践的な技術普及のための研修のSMSやオンライン配信を通じた、より効果的で多都市の人々が学べる工夫の希望”等、日本の環境技術理解促進のためのこうしたイベントの継続的な実施を希望するコメントや提案が寄せられました。日本企業の専門家による技術に関する説明、特に専門家の知見や経験を共有するような活動や専門家との直接的な意見交換等の交流ができる活動が期待されていることが分かりました。
 また、インドへの日本の環境技術の普及要因として、主に‘GHG排出削減・省エネ効果’、‘環境改善効果’、‘技術の十分な理解、技術導入メリット’といった点が示され、印企業が技術導入によるGHG排出削減や環境改善等、実際的な導入効果を重要視していることが分かりました。

日本企業のビジネス展開にも寄与

 日本企業からもイベントを通じて自社の技術を印企業に理解してもらい、その上で関心を示した企業と商談が進められる点や、JITMAPのイベントという枠組を通して、中立的な立場で日本企業がインド企業とネットワーキングができる点等のメリットが評価されました。
 蒸気管理システムの講師を務めた日本企業からは、参加した印企業から引合いがあって2社と商談が進み、同企業の技術製品が導入された、という情報提供がありました。
 また、同システムの技術に関心を示したある印企業に対し、その後日本人専門家と同企業の現地スタッフが技術適用可能性調査(FS)を実施しました。調査結果を印企業の経営陣に報告したところ、経営陣は同日本企業の蒸気トラップに大きな関心を示し、同企業製のトラップを試用することとなりました。

インドの課題解決への貢献に向けて

 上のような成果や参加者のコメント・提案を踏まえ、JITMAPの枠組を活用して、今後も印産業部門の脱炭素化やエネルギー効率化に貢献していきたと思います。印企業に日本企業の環境技術の理解を向上してもらうセミナー等の活動を通じて、両者間をつなぎ、印産業部門に日本の環境技術を普及促進する活動を継続的に実施すことにより、印企業のエネルギー効率化や環境改善に貢献できると考えられます。併せて、二国間クレジット制度(JCM)等を活用した事業の促進のため、これらの活動を通じて日印企業のマッチメイキング等の機会創出にも取り組んでいく予定です。

技術に関する研修講義

デモサイトでの技術の実演と説明


JITMAPはIGESとTERIが事務局として、日印両国の政府関係機関・ビジネス団体等の協力関係機関等と連携し、インドにおいて日本企業の環境技術の普及を促進するための活動を実施しています。具体的には、日本企業の協力を得て、インド企業の経営幹部やエネルギー管理者、エネルギー診断⼠向けの⽇本の環境技術に関する理解を深めてもらうセミナーやワークショップ、技術の適⽤可能性及びその適用効果等を把握するための現地企業における技術適用可能性調査(FS)、さらに、技術の伝搬者となる可能性の高いエネルギー診断⼠やエネルギー管理者等を対象としたより実践的な技術研修を実施しています。

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