活動記事:イベント報告
2022年度 日本・インド環境ウィークにおける
JITMAPiセミナー開催報告
イベント名 | インドにおける日本の環境技術の導入に向けたセミナー 「日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)の活動を通じたインドにおける日本の環境技術の移転に関する取り組みと課題」 |
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開催日 | 2023年1月13日 |
開催方法 | インド・ニューデリー市内のホテルにて対面・オンライン開催 |
概要 | 日本国環境省とインド国環境・森林・気候変動省が両国の関係団体とともに開催した日本・インド環境ウィークiiの一連のプログラムの一つ。主に中央・地方政府関係機関、企業、学術機関、国際機関・NGO等、日本・インド環境ウィークの現地参加者に加えて、オンラインからも合わせて150名ほどが参加。本セミナーでは、JITMAPを通じた日本の環境技術の普及促進活動の概要や成果について紹介すると共に、両国の関係者から、環境技術の導入における障壁や課題を共有し、それらの解決策に関する議論を通じて、インドのネット・ゼロ達成に向けた、日印連携による取組の重要性を発信した。 |
関連資料 |
日本‐インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)特集 |
JITMAP成果報告の記事 |
【FS・企業内研修を通じた自動車製造工場の省エネ貢献】はこちらから 【FSを通じた圧縮空気システムの運用改善・省エネ実現】はこちらから |
イベントの様子ii
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背景
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は2016年に、日本の低炭素技術のインドの産業界への移転促進を目的とした枠組である「日本-インド技術マッチメイキング・プラットフォーム(JITMAP)」を、日本国環境省の支援を得て、インドのエネルギー資源研究所(TERI)と共同で立ち上げました。立ち上げ以降、様々な産業部門への汎用性の高い日本の低炭素・省エネ技術のインドの製造業への普及促進に努め、近年は対象技術を環境技術にも拡大し活動してきました。
JITMAPでは、今後も日印政府・民間企業等と協力して、日本の環境技術を有する企業とその技術を必要とするインドの企業をマッチングし、技術の普及促進をサポートすることで、インドのネット・ゼロ達成及び持続可能な社会構築への貢献、それに向けた日印環境協力の促進に取り組んでいきます。
セミナー報告
本セミナーは、JITMAPの活動報告とパネルディスカッションで構成されました。
JITMAPの活動報告
最初に公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センターの濱口俊典氏が、JITMAPの全体像として、その取組の概要や3つの活動事例(株式会社前川製作所、バンドー化学株式会社、公益社団法人日本環境技術協会との協力活動)及び主な活動成果等について報告しました。
その後、日本人専門家を代表して、IGESフェローの齊藤司氏が、圧縮空気システム(CAS)にかかる現場での活動とその経験、及び直近に実施した技術適用可能性調査(FS)の成果等について紹介しました。発表の中で、齊藤氏は、技術的側面から省エネの実現やCO2の排出や廃棄物の削減といったCASの有用性を説明するだけではなく、実際の活動では、製品等のハードの技術よりも制御・運営技術の改善が重要であること等について指摘しました。さらに同氏は、FSを実施したインドの3企業における改善提案や提案実施効果等について説明し、繊維工場2件では年間11~14%、鍛造工場では36%以上のエネルギー削減が見込まれること等も含めた具体的な成果事例を紹介しました。
続いてJITMAPの活動に参加したインド企業2社より、大きなエネルギー消費削減や更なる省エネへの取組計画等を含む技術、最適な運用技術の導入によるメリット等の報告がありました。
Trinity Engineers Pvt. Ltd.のDinesh Raskar氏は、2017年度からのJITMAPを通じた活動が、同社において大きな省エネ効果に繋がったという活動事例について紹介しました。具体的には、同社は日本の圧縮空気システム専門家による提案を基に、配管の変更、空気漏れの修理及び古いパイプラインの交換等を実施したことで、30%以上の省エネが達成されたと報告しました。
TLV PTE LTD.のRavi Mishra氏は、JITMAPと自社によるインドでのこれまで約100件の工場における調査結果として、ドレン排出個所のうち、ドレン排出回収の故障率は約17%で、その約41%は蒸気漏れが占めていることを説明し、これにより年間約10億インドルピーの金銭的損失、36,500tのCO2排出、27,000m3の無駄な排水を引き起こしていることを強調しました。
パネルディスカッション
続くパネルディスカッションでは、日本人専門家・インド企業・JITMAPの支援機関からのパネリストが、日本の環境技術の導入に係る具体的な障壁・課題を共有し、それらの解決策やJITMAPへの提言、今後の更なる日印協力の重要性等について意見交換しました。
JITMAPの支援機関であるグジャラート産業技術コンサルタント機関(GITCO)のKetan H Kakkad氏は、JITMAPの活動を今後スケールアップするには、特定の産業や産業クラスター、特定の都市・地域に焦点を当てた活動を集中的に実施して成功事例を作り、他の都市・地域の類似産業や産業クラスターに横展開すること等が重要であることを指摘しました。
圧縮空気システムの専門家である齊藤氏は、JITMAPの活動においても日本の高機能・性能の技術の移転を進めがちであるが、投資額が高くなることから、各企業の実態に合わせて段階的に進めることが重要であり、既存機器の運用方法を工夫してそれに適する運用を行えば、高機能製品には及ばないものの、省エネにつながるようなものはたくさんあるので、先ずそこから始めることも可能であると指摘しました。
インド企業のTrinity Engineers Pvt. Ltd.のDinesh Raskar氏とPravin Narsale氏は、工場で働く管理者から作業者レベルまでの全ての社員の認知を向上させることが、企業の省エネに繋がることを強調しました。
本セミナーは会場の参加者にも大きな反響を及ぼし、当初のプログラムでは予定していなかった会場参加者からの発言もあり、JITMAPの活動を通じたインド企業と日本企業とのマッチングへの支援に称賛の声が寄せられるなど、大盛況のうちに幕を閉じました。
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i JITMAPはIGESとTERIが事務局として、日印両国の政府関係機関・ビジネス団体等の協力関係機関等と連携し、インドにおいて日本企業の環境技術の普及を促進するための活動を実施しています。具体的には、日本企業の協力を得て、インド企業の経営幹部やエネルギー管理者、エネルギー診断⼠向けの⽇本の環境技術に関する理解を深めてもらうセミナーやワークショップ、技術の適⽤可能性及びその適用効果等を把握するための現地企業における技術適用可能性調査(FS)、さらに、技術の伝搬者となる可能性の高いエネルギー診断⼠やエネルギー管理者等を対象としたより実践的な技術研修を実施しています。
ii 日本・インド両国の環境省ハイレベルによる政策協議、展示会、セミナー等を一体的に開催し、環境インフラのトップセールスを図るとともに、日印両国の環境分野のビジネスチャンスの効率的かつ効果的な創出を目指して開催されました。
iii JPRSIでは環境インフラの海外展開に役立つ情報をお届けするセミナーを随時開催しています。
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