活動記事:セミナーレポート
2025年度 第3回JPRSIセミナー
「ASEANにおける最新の気候変動政策の動向
及び脱炭素投資の機会」

| イベント名 | 2025年度 第3回JPRSIセミナー 「ASEANにおける最新の気候変動政策の動向及び脱炭素投資の機会」 |
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| 開催日 | 2025年12月16日 15時~17時30分 |
| 開催方法 | ハイブリッド開催 |
| 概要 | 本セミナーでは、環境省が行うASEANにおける脱炭素政策形成支援及び国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)の結果概要について説明されました。また、ASEANにおけるマーケットを的確に理解することを目的として、マレーシア、インドネシア、フィリピンおよびベトナムから政府担当者・有識者から、各国の政策や脱炭素ソリューションについても説明され、さらに、有識者から、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標である「国が決定する貢献(NDC)」や隔年透明性報告書(BTR)をどのように読み解き、ビジネスチャンスにつなげることができるのかの説明がありました。セミナー終了後には名刺交換会を実施し、参加者のネットワーキングが促進されました。 セミナー詳細については、下記「関連資料」ページをご覧ください。 |
| 関連資料 | https://jprsi.go.jp/ja/static/activity-archive/2025/r7_seminar3_report |
イベントの様子ⅰ
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登壇者集合写真 |
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名刺交換会でネットワーキングが活性化 |
オープニング/キーノートレクチャー
冒頭、土居健太郎環境省地球環境審議官より開会挨拶が行われ、近年深刻化する異常気象への対応として、パリ協定の1.5度目標達成に向けた国際協力の重要性が強調されました。特にASEAN諸国との連携において、第3回日ASEAN環境気候変動閣僚級対話で改訂された「日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)」などの枠組みを通じ、民間からの脱炭素投資を促進することが鍵であると述べられました。
続いて、野本卓也環境省気候変動国際交渉室地球環境問題交渉官より、COP30の結果概要と日本のASEANでの脱炭素に向けた協力の取組状況が説明されました。COP30では、緩和・資金などに関する包括的な「グローバル・ムチラオ決定」が採択されたことが紹介されました。また、日本は、企業のGHG排出量の見える化を推進するコ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(PaSTI)や、BTR作成などを支援するアジアでの透明性支援イニシアティブ(SITA)といったプロジェクトを通じ、ASEAN諸国の脱炭素政策形成を強力に支援していること、例えば、インドネシアやタイでは日本の協力によりNDCが作成されており、ネット・ゼロ目標の前倒しや対象ガスの追加が実現しており、新たな脱炭素の投資機会の創出に繋がっていることが説明されました。
マレーシアの動向について、天然資源環境サステナビリティ省のモハメド・ハズワン・ビン・アズミ氏より、2050年ネット・ゼロに向けた具体的なロードマップが示されました。同国では2026年春に「気候変動法」の成立が見込まれており、エネルギーや製造業を対象とした炭素税の導入や、国内排出量取引制度(ETS)の構築が進められていること、特に石油・ガスやセメント、鉄鋼などの主要セクターにおいて、排出量報告の義務化が進む予定であることが説明されました。
インドネシアの動向について、工業省のリズカ・トリ・ワルダニ氏より、セメント業界などの脱炭素化の取組が紹介されました。インドネシアは、2030年までに大幅なGHG削減を目指しており、燃料・原料の代替やCCUS技術の導入を推進していること、また、セメントや金属、肥料などの高排出産業を対象とした排出量取引制度の設計も進んでおり、国際市場での競争力強化を目指していることの説明がありました。
フィリピンの動向について、商工会議所のジーザス・G・レイエス氏より、自然災害リスクの高さと国際支援に依存した削減目標の現状が説明されました。同国における、低地球温暖化係数冷媒技術やメタン回収、EV化、スマート水配水網といった多岐にわたる環境ソリューションのニーズの高まりが紹介されました。
気候変動政策の動向
本セッションでは、環境省がASEANにおいて行う国際協力を中心として2つの発表とASEAN各国の日本大使館に在籍する環境アタッシェによる各国の現状が共有されました。
大阪大学・国立環境研究所の増井利彦氏は、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)を用いたシナリオ分析に基づき、2050年ネット・ゼロ達成には早期の技術導入と再エネ主力化が不可欠であり、対策の遅延は将来的なコスト増を招くとの説明がありました。また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの森本高司氏からは、各国が提出するBTRには各国の詳細な技術ニーズや支援ニーズが明記されており、これらを分析することで、脱炭素投資の有望な分野を特定することが可能であると説明されました。
環境アタッシェによる発表では、タイについて大澤一等書記官から、天然資源環境省が中心となり、ネット・ゼロ目標を2065年から2050年に前倒ししたと説明されました。2025年には気候変動法案が閣議決定予定で、法案には排出量報告義務やETS、カーボンプライシング、炭素国境調整措置(CBAM)対策が含まれていることや、民間では二国間クレジット制度(JCM)のプロジェクトが約60件進行し、パリ協定第6条に基づくクレジット移転も実施されたことが紹介されました。また、二酸化炭素回収・貯留(CCS)や水素、資源循環などが注目分野であることが共有されました。
インドネシアについて重松一等書記官から、ネット・ゼロ目標は2060年またはそれより早くのままで据え置かれ、森林・土地利用を重視していると報告されました。ハイドロフルオロカーボン(HFC)が対象ガスとして追加され、カーボンクレジットやカーボンプライシング制度改正でボランタリー市場が正式化されていること、再エネ70GWの増加を掲げる一方、石炭火力新設の計画もあること、民間ではJCMプロジェクトが61件進行し、自然ベースのクレジット需要の高まりや、バイオ燃料や水素、CCSなどに投資機会があることが説明されました。
シンガポールについて加藤二等書記官から、年間排出量を4,500万~5,000万t-CO₂に削減する目標を掲げ、炭素価格を2024年に25SGD/t、2026~27年に45SGD/tへ引き上げる予定と説明されました。排出量の70%が課税対象で、5%はクレジットでオフセット可能であること、二国間クレジット協定を10カ国と締結し、ASEANパワーグリッドや原子力発電の小型モジュール炉(SMR)の導入検討も進めていること、重点分野はカーボンクレジット市場、水素・アンモニア、原子力であることが示されました。
ベトナムについて鴨志田二等書記官から、2030年の総排出量が927.9MtCO₂に達し、2014年比で3倍以上増加するとの予測と報告されました。政府は2050年カーボンニュートラルを宣言し、2035年にピークアウト予定であること、NDCでは2030年までに成り行きシナリオ(BAU)比、無条件で15.8%削減、国際支援ありの条件では43.5%削減を目指していること、排出量取引制度の法整備が進み、JCMは50件以上進められていること、再エネ、省エネ、廃棄物発電に加え、農業・防災やデジタル分野にも投資機会があることが紹介されました。
地域や国別の金融動向や施策から紐解くビジネスチャンス
各国の金融動向やカーボンプライシング、環境情報開示などビジネスに直結するトピックについてフィリピンとベトナムの現状の発表が行われました。
OECCの成瀬氏から、フィリピンで排出量報告義務化やカーボンプライシング導入を含む法案が審議され、再エネ比率の引き上げや農業・交通・産業・廃棄物分野での削減施策が進められていること、また、低炭素燃料や廃棄物発電などの投資機会が広がっていることが共有されました。
最後に、ベトナムの動向について、農業環境省のルオン・クワン・フイ氏より、2027年の排出量取引制度の完全運用を目指した法整備や、グリーンプロジェクトへの金利補助といった金融支援策が紹介されました 。ベトナムでは、規制強化と金融機会が企業の成長戦略に組み込まれており、再生可能エネルギーや廃棄物発電などの大型プロジェクトへの期待が高まっていると説明されました。
名刺交換会
セミナー後の名刺交換会では、参加者と環境省担当官や登壇者がアットホームな雰囲気の中意見交換している様子がうかがえました。特に、マレーシア天然資源環境サステナビリティ省とインドネシア工業省からの登壇者と直接お話しする機会はなかなかないことから、参加者の皆様から頂く質問に次々と笑顔と歓談を交えながらご回答され、活発な交流がなされていました。
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