現地の声:イベントで学ぶ、
各地域状況/日本企業成功事例

2025.8

小島嶼開発途上国(SIDS)における脱炭素フォーラム

バヌアツ、パプアニューギニア

- 電力網のない遠隔地域に電力アクセスを -

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セミナー名 「小島嶼開発途上国(SIDS)における脱炭素フォーラム」(2025.3開催)
登壇者 株式会社 東芝
Nextビジネス開発部 新規事業推進室
Delighting Everyone Project チーム プロジェクトマネージャー
鈴木 将男
概要 東芝がバヌアツとパプアニューギニアにおいて実証可能性調査を実施した、島嶼国の離島・遠隔部を対象とした「再生可能エネルギー分散型電源サービス」の説明。
関連資料  

 当社は大洋州の電化が難しい地域を対象に、再生可能エネルギーを使用した分散型電源サービスに取り組んでおります。本日は当社の本取組についてご紹介をさせて頂きます。
 はじめに、当社が注目する島嶼国特有の課題を説明します。第1に、島国では人口が広範囲に分散しており、特に遠隔地ではインフラの経済的な設置や維持が困難であることです。第2に、これまでも多数の遠隔地域向けのエネルギー支援プログラムが実施されてきましたが、主に資金や設備の提供に重点が置かれており、持続可能な運用・維持管理システムに課題があります。第3に、都市部分から離れた離島や遠隔部では正確なニーズが見えておらず、最適な投資が困難な点です。(株)東芝(以下、「東芝」)は、当社のサービスと地域コミュニティとの協働によりこれらの課題を解決します。

遠隔地の小規模商店と協働

ビジネスモデル(発表資料 スライド4)

 このサービスでは、まず遠隔地の村で商店に太陽光発電システムと多数の充電式LEDランタン、ポータブル電池等の貸し出し電気製品、貸し出しの決済をする為のアプリをインストールした決済端末を設置します。次に、商店が、これらの電気製品を充電し、地元住民に安価に貸し出します。そして、住民はライトや電池を使用し、翌日商店に返却します。こうして、電力網のない遠隔地域で持続可能な電力アクセスが可能になります。

 このビジネスモデルのポイントは「支払いシステム」にあります。電気製品には、ロック機能が付いており、住民が機器を借りる際に、商店が少額のレンタル料を受け取り、決済用のアプリケーションを使用してロックを解除します。また、商店が電気製品のロックを解除するためには、「サービス運営会社が発行するポイント」が必要です。このポイントは現地のモバイルマネーサービスを通して店主がサービス運営会社へ送金し、ポイントを購入する仕組になっています。

 村に貸し出す発電機やランタンなどは、サービス運営会社が責任を持って管理・修繕、交換を行います。この様にサービス運営会社が管理・運営を行う事で、住民は、少額の料金で、故障を心配することなく、安心して、安定的に電力を使うことができます。

地元裨益や環境への影響を配慮した、持続可能なサービスを提供

(発表資料 スライド5より)

このサービスには以下の特徴があります。

①人口が分散した地域でも導入可能

送電線の延長は不要のため、人口が分散した地域でも導入可能で、経済的な観点から継続性を確保できます。

②環境負荷が低い

サービス事業体が、各機材の、運用、保守、および更新について責任を担います。

そのため、村内に故障した設備などが残ることはなく、環境への影響も低く押さえることができます。

③展開の速さ

民へのシステム説明と合意~設備の設置~関係者への研修が数日で完了します。

炭素国境調整を通じて、各国は公平な競争環境を整え、排出がカーボンプライシングを導入していない地域に移ること(カーボンリーケージ)を防ぐことができます。このような国際的な協力は、真に持続可能な世界経済を構築するための鍵となります。

④雇用創出と地域経済への貢献

商店の新たな収入源を創出し、住民の生産性を向上させ、地域住民の雇用を創出します。

完全な電化までの移行技術として、電化ニーズを可視化し、最適な社会インフラの構築に貢献できます。

バヌアツやパプアニューギニアで高評価

バヌアツでの利用者へのインタビュー(発表資料 スライド7)

バヌアツでは、実証可能性調査の開始から2年以上が経過しました。約120人の村では、毎月約600台のLEDランタンがレンタルされています。
利用者へのインタビューでは、子どもたちの勉強、料理、家族が運営するバーの照明、自宅のセキュリティのために使っているとのことでした。他の多くの住民からも、このサービスが生活に役立っているとの声を聞いています。

パプアニューギニアでのフィールドスタディ(発表資料 スライド8)

パプアニューギニアでも、パプアニューギニア投資庁の支援を受け、パラマナとムッシュ島で調査を実施しました。バヌアツと同様に、現地の住民からポジティブなフィードバックがありました。

まとめ

 これまでの実証結果を踏まえ、事業化に向けて新会社設立の準備を進めており、2025年度から事業を開始したいと考えております。
これにより、太平洋島嶼国における「電気へのアクセス」と「再生可能エネルギーの普及」に貢献していきます。同様の課題をお持ちでいたり、ご興味を持たれたりされた方は、ぜひご一緒に取り組んでまいりましょう。

発表者紹介

株式会社東芝
Nextビジネス開発部 新規事業推進室Delighting Everyone Project チーム
プロジェクトマネージャー
鈴木 将男(すずき まさお )

株式会社東芝入社後、2002-2004年にJICA協力隊に参加し、バヌアツで活動。
この経験を通して2020年に本事業アイデアを立案し、事業化に向けた調査・実証などに従事。

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本記事は、「小島嶼開発途上国(SIDS)における脱炭素フォーラム」(2025年)
https://www.env.go.jp/press/press_04532.html
における(株)東芝の発表を、許可を得て抜粋してまとめたものです。